国際派行政学者の挑戦

慶應SFCの教員。才能ないなりに世界レベルの行政学者を目指す40代独身男(負け組)のブログ -月1回ぐらい更新-

行政読書・アニメおすすめベスト5

23日(金)に最後の授業を終え、今年も(!?)クリスマス・イブは外の喧騒になるべく触れないよう、部屋に籠って読書と将棋に没頭しましたd(- -) ちなみに、25日はある女性の方(70代保険営業)と外でお茶しましたので、孤独なクリスマスではなかったです!

 

年末年始は、1年でも数少ないアニメや読書が思う存分許される機会と思いますので、おすすめの行政関連作品を5つご紹介したいと思います。本ブログは書籍やアニメの紹介により収入が入る仕組み(アフィリエイト)にはなっておりませんので、純粋な個人のおすすめです!:

 

1.ACCA13区監察課

行政機関の話を、ここまでエンタメしている作品はありません。地方分権が1つのテーマとなっています...人間ドラマであり、かつ、国家統治に関する壮大なテーマを扱う傑作です。無料配信は終わっていますが、お金を払ってでも観るべきです!

 

2.Kage, Rieko. 2010. Civic Engagement in Postwar Japan: The Revival of a Defeated Society. Cambridge University Press.

東大 鹿毛利枝子先生が2010年に出版した英語単著です。Cambridge University Pressから出版するなんで相当に難しく、有名な著書と思われますが、恥ずかしながら私は最近読みました(^ ^; 英語のレベルが違う!なんじゃこりゃ!!英文の更なる研鑽の必要性を感じさせてくれた1冊です。現在査読中の論文でも、政府が強制的にcivic engagementさせても、social capitalは強まるという主張を引用させて頂きましたm(_ _)m

 

3.曽我謙吾. 2019. 『日本の地方政府:1700自治体の実態と課題』中公新書.

学生に日本語で地方自治を勉強したいのですが、まず何を読むべきですか?と聞かれたら...こちらをお勧めしています!現役公務員も、これから公務員を目指す人も、読んで学ぼう日本の地方政府(地方自治体と呼ばないところが国際的)!

 

4.清水唯一朗・瀧井一博・村井良太. 2020. 『日本政治史:現代日本を形作るもの』有斐閣.

若い時に大して勉強しなかったもので、少しずつ教養を高めるため読書をしております。偉いでしょ(* ̄ー ̄*) 歴史を客観的に記述するだけでなく、当時の人々の息遣いが聞こえてきそうなストーリーある教科書がこちら!

 

5.Noda, Yu. 2022. Intermunicipal Cooperation, Integration Forms, and Vertical and Horizontal Effects in Japan. Public Administration Review.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/puar.13569

同志社大学 野田遊先生が行政トップジャーナルPublic Administration Reviewに出版した単著論文!正直悔しい気持ちが強いですが、日本国内で自分を刺激してくれる先生に感謝したいですm(_ _)m 来年も挑戦する気持ちを忘れず頑張ります!

けんかをやめて

浦佐西山から望む八海山 (11/22 国際大学出張講義の帰りに撮影)

11月は地獄... 研究者殺しとも思える事務量の波に呑まれながら、Public Management Research Conference(PMRC)という最も大きな国際学会の締め切りが迫るこの時期は、国際派行政学者にとって正念場です。毎年プロポーザル提出を諦めようと思うのですが(過去記事1 2)、今年も未完成度だけは満点の計量分析らしき何かを提出しました(。・ε・`。)  うまく波を乗り切ったとは思えませんが、藻掻いて生き残った気はします(´Д`;)

 

ここまで踏ん張れたのは、開催地がオランダだからです!あのゴッホ美術館があるオランダだからです!!未完成の中に可能性を見つけて、お願いだからオランダ芸術を観させて(T^T) 本学関係者の皆様もちろん学会発表が主目的です

 

本題に移りますが、最近政治・国際関係の先生方が、twitter上で「本物の研究者とは?」的な話題でバトルしております。端的に言えば、「国際学術誌への論文掲載を目指し研究する先生 vs. 主に日本語で研究しメディアで活躍する先生」みたいな構図だと思います。傍から見れば自分は前者に属すると思われるのですが、個人的には日本語であれ英語であれ、定性であれ定量であれ、向上心を持って研究されている先生を尊敬します。一方で、研究もせずにメディアで根拠もなく断言する先生は尊敬できません。

 

ただ、SFCに来てから、メディアで活躍されている先生が羨ましいと思うことはあります。ほとんどの学部生にとって、トップジャーナルの論文掲載より、テレビ出演の方が何倍も価値があるのだと実感させられます。自分は才能がないので、かなりの時間と労力を割かないと国際的に勝負できません。そんな研究があまり認知されない日本の大学は、キツイなと感じます。しかし、この状況は、メディアで活躍される先生のせいではなく、外部発信しない国際派研究者のせいとも言えます。

 

最近は、国際業績もある落合先生や成田先生が、メディアに多く出演しています。到底自分にはできない芸当です。今日も提出した論文審査の進捗をウェブで執拗にチェックしながら、学生には「結果なんて気にせず、思い切った研究をしろ!」と矛盾した指導をし、論文を読むつもりがオンライン将棋を指して1日が終わりそうですw

他人の土俵で勝負する

学部企画の書籍『総合政策学をひらく』の企画として(過去記事)、同僚の先生方と方法論について座談会をしました。職場が同じでも、学問について議論するなんて初めての経験で...ドキドキしてしまいました(*/∇\*) キャ

 

座談会では、英語で主に論文を書き統計分析する教員は私1人ということで...袋叩きでしたヽ(゚Д゚;)ノ゙ヒイィィィ!! 英語ばかりになっては母国語の研究が消えてしまうという危惧や、統計中心の国際学術誌の基準だけで社会科学研究の価値は測れないといった声を頂きました。仰る通りでございますm(_ _)m

 

とはいえ、学閥や師弟関係で大学の就職が決まっていた今でも日本の政治・行政分野で、自分が仕事を得ることができたのは文科省主導のグローバル化推進のおかげとも思います(参考リンク)。国際業績の重視や公募の推進など時代が変わらなければ、居場所はなかったです。

 

国際学術誌掲載の合否は、主に西洋で決められた評価基準なので、他人の土俵との揶揄もあります。ただ、匿名で審査される上、最近ではデータと分析方法も公開しますから、ある程度公平性や透明性があるとも言えます。公募がなくとも日本の大学は、かなり公平に人選していたというお話も伺うのですが、少なくとも自分が今の大学にいたとは思えません。中堅私立出身かつオールドルーキーの自分は、方法論を選択したというよりは、生き残るために自然と選択が限られていたとも思います。

 

世界レベルの研究者を目指す以上、今後も他人の土俵で勝負するしかないのだと思います。日本人が自分の土俵で勝負できるとしたら、それは十分に国際的でない舞台だと思います。ただ、できる範囲で日本語での貢献もしていきたいです...ということで、初の日本語論文『行政学における方法論の厳密化と多元的共存』が公開されました!下記リンクからジャンジャンバリバリ ダウンロードしてください!!

追伸:皆様のおかげで、こんな堅苦しいタイトルの論文がアクセス数ランキング3位になりましたm(_ _)m ありがとうございます(T^T) https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jspa1962/-char/ja

 

潜っている間は息ができない

秋学期が来週から始まるなんて信じられない(T^T) 異動後1年半が経ち痛感したことは、学期中に研究はできない!ということです... ただ、そんな恐怖感が怠惰な自分を突き動かし、今年の夏季休校期間はギリギリ合格点ぐらい研究に勤しみました(^ ^;

 

今夏の成果は、以下の3つでした:

(1)学部編集本の章(7月末に脱稿!)、(2)科学研究費申請書(9月初旬締切1週間前に提出!)、(3)審査不合格だった英語論文の大修正(conclusionあと数行で完成...)

 

(2)と(3)は、書いたからと言って結果が出るわけではありません。厳しい競争に勝つために、置きにいってはいけないと学生に説教している以上、結果はどうであれ思い切ったアイディアをぶつけようと心掛けました!(過去記事1)

 

しかし、才能ない自分がマシなアイディアをすぐに思いつくはずもありません。プロの研究者になって約5年が経ち強く感じることは、決められた構成に従って文章を書いたり、収集されたデータを分析することは、さほど大変ではなく充実感もあります。むしろ、進まない原稿を前に、納得できるアイディアが出るまで考え続けることが、一番辛いです。

 

以前は大量に論文を読んだり、英語や統計をストイックに勉強することで、良い研究ができると信じていました(前ブログ記事)。ただ、長く研究生活を続けていくうえで、結果が出ないこともあります(過去記事2)。自分のアイディアはまた駄目なんじゃないか...そんな不安に打ち勝ち、新しい研究を続けるためには、息継ぎをしなくてはいけないと考えるようになりました。ということで、今夏は将棋、美術鑑賞、国内旅行を絡めながら研究を進めてみました... 結果が出なければ、ただ遊んでただけになりますけどね( ̄ー ̄; 

 

最後に、自分の研究の支えになっている家族、友人、学生に感謝しながら、今夏のテーマ曲だったNICO Touches the Wallの『Diver』(NARUTO-ナルト- OP)とともに締めさせて頂きます(`・ω・´)※本ブログ登場2回目w

いつも迷子

先週は群馬経由で新潟南魚沼に行き、前職国際大学を2年ぶりに訪れました!

群馬では伊香保竹久夢二記念館を訪れ、ついでに石段を登り、その先の山頂を目指したつもりが...なぜか迷って県立スケートリンクに辿り着きました(^ ^; きっと神様が、地方行政施設の現状を調べるよう道をお示しになったに違いありません重度の方向音痴

伊香保石段街の先にある森林道...この先に待ち受けるものは

県立伊香保スケートリンクだった...

新潟では元同僚の先生方や職員の皆さんと酒席をご一緒頂き、2年ぶりにもかかわらず歓待頂きましたm(_ _)m 3年通った馴染みの店にも顔を出し、異動したことを少し寂しく思いました(´ω`。) 世の中に完璧な選択などなく、何かを犠牲に別の何かを得るのですが、それが正しいかなんて分かる訳もありません。

 

新潟最終日は、在任中も訪れなかった秘境 裏巻機(うらまきはた)渓谷を訪れました!なぜか迷いそうな場所で迷わない(^ ^; お目当ての滝を見て、雨が降るのを察知し引き返す完璧な立ち回りで旅を締め括りましたd(- -)

 

常に順調に進んできた人は、迷うことが怖いかもしれません。ただ、迷いながらどうにか進んできた自分としては、近道はつまらないとさえ思うのです。迷うのも悪くないと思えれば、未踏の地に足を踏み入れることもできるはず...どこを進んでも迷うなら、あまり人が歩かない道を進んでみたいと感じた旅でした。

裏巻機渓谷 割石沢 なんと滝の下にトレッキングコースが通る

滝の下からの景色 足を踏み外せば...

綸言汗のごとし

酷暑の中ゼミの現地調査で訪れた相模湖 

7月半ばに春学期の授業が終わり、今は採点に追われる時期です。それでも少しずつ時間に余裕が出始め、学部で出版する本の章を書き終えました(≧∇≦)日本の大学に所属している以上、日本語の執筆依頼はある程度引き受けなくてはいけません。ただ、自分の目標は世界レベルの行政学者になることですから、とにかく早く終わらせたかったです!これで夏季休校中は英語論文に集中できます(☆゜д゜)

 

初めは嫌々書いていた章でしたが、学ぶことも多かったです。学際的な研究の方法論について高校生・学部生向けに分かりやすく説明するのが狙いでしたが、平易な言葉で書くには深い理解が必要だと感じました。誰かの依頼で執筆するのは好きではないですが、自分の世界が広がるということも心に留めておくべきだと思いました。

 

よく考えてみれば、自分も学生にレポートを課し、つまり執筆依頼をして、学生の知見を広げさせようとしています。どの授業でも、提出期限の遅れや手抜きのレポートに舌打ちしていましたが、他人のことはあまり言えないなと(^ ^; 偉そうに教壇で説教垂れる仕事ですから、せめて自分は締め切りを守って、嫌な仕事も一生懸命こなそうと採点しながら自戒しています( ´・ω・)

 

今学期前半では、体育・語学を除けば本学唯一の必修授業『総合政策学』を担当し、330名を前に説教していました。たしかグループ発表の際は、「厳しい競争であるほど、置きに行っては勝てない。思い切って自分のアイディアをぶつけほしい!」とかのたまわった気がします(-_-) そんなこと言ってる奴が、今夏どれだけ結果を残せるか乞うご期待ください...

黒歴史も少しだけ白くできる

人間は完璧とはなりえないので、誰しも黒歴史があると思います。自分の場合は、大学の学部時代がそれです。新入生向け必修授業『総合政策学』にて、「4年間でやりたいことを見つけなさい!」と説教垂れているくせに、自分は何をしていいか分からず留年しかけたからです(^ ^;

 

そんな振り返りたくない学部時代ですが、本学に同い年の先生がいらっしゃり、さらに自分と同じく剣道をされ(過去記事)、慶應体育会剣道部の主将まで務めたとのことでしたΣ(゜ロ゜;) 剣道の部活は、実質高校で辞めたのですが、大学1年の初めは体育会剣道部に所属していました。退部後も1人の同級生とは、細々と付き合いが続きました... そして上記の先生を通じて、23年ぶりくらいにSNSで彼と話す機会がありましたm(_ _)m

 

大学入学当初、剣道を続けるつもりはありませんでした。ただ、彼に会って気持ちが揺らぎました。別の県でしたが、高校時代に何度か対戦していました。インターハイ・ベスト8まで勝ち上がった高校の中堅を務め、リスクを顧みない攻撃的な剣道が魅力的でした。守りを重視した弱気な剣道をしていた自分には、輝いて見えました。

 

ただ、残念ながら大学の体育会剣道部は強豪ともいえず、何より無駄に厳しい上下関係があり、新入生にとって剣道を楽しめるような環境ではありませんでした(´・ω・`)彼も後に部活と距離を置くようになるのですが、剣道推薦で入学した当初に辞めるわけにはいきませんでした。そういう意味で、自分だけ先に逃げ出したような罪悪感がありました。

 

大学4年になって、彼が部活と距離を置くようになってから、地元の道場で少しだけ一緒に剣道をしました。久しぶりに竹刀を握り、小学1年生から続けた剣道に別れを言って、別の道に進むことができました。こうして23年も経って、剣道界で活躍し続ける彼と再会でき、少しだけ大学時代を明るく思い返すことができましたd(- -)