国際派行政学者の挑戦

慶應SFCの教員。才能ないなりに世界レベルの行政学者を目指す40代独身男(負け組)のブログ -月1回ぐらい更新-

PhD進学を志望する学生への指導

大学院生(修士)の指導を始めてから3年目を迎え、来月に2期目のゼミ生たちを送り出すことになります。実務経験のある平均29歳の留学生が指導対象ですから、他の大学で日本人学部生を指導するのとは異なる事情があります。

 

その1つが、博士課程(Ph.D.)への進学を希望する学生の多さです。特に今年迎え入れた3期目のゼミ生は、半分以上がPhD進学を希望していますΣ(゚ロ゚ノ)ノ 中央・東南・南アジアでは、日本含め海外で取得する学位の持つ価値が高いようです。

 

本学には物凄い優秀な学生もいますが、教育環境が整っていない国出身の公務員のために実務教育を提供する開発支援の側面もあり、欧米トップレベルの大学院などと比べると学業レベルが高いとは言えません。感覚的にはトップ10%に入るような成績であれば、本学あるいは他の国内・海外PhDへの進学の可能性が何とかあると思います。

 

つまり、あるタイミングで何人かに、今の成績では本学含めPhD進学が難しい旨伝える必要があります...こんな何度も失敗して大学院教員になった自分がです(参考記事)。『夢は願えば必ず叶う!』とかいう無責任な言葉をドヤ顔で放つ方法もありますが、もう少し真面目に進学を薦める基準みたいなものを探しています。

 

まずは、成績上位で論文もしっかり書けていれば、応援する...単純な話です。次に、成績はさほど良くないが、論文が面白い。3つ目が、成績は良いが(暗記は得意だが)、自分で論文が書けない(テーマが見つけられない)。4つ目は、PhD進学を志望しているが、成績も悪く、やりたいテーマも曖昧で、つまるところ努力していない...応援しない比較的簡単です。

 

問題は、2つ目と3つ目です。2つ目の論文が面白いというのは...教員の主観ですが、個人的に頑張ってPhDを目指してほしいと思ってしまいます。ただ、如何せん本学での成績だったり、TOEFLGREなどPhD進学に必要なスコアが低いと、こちらで良い推薦状を書いてもPhDに入学が認められません。自分が7年ぐらいかけて英語力などを上げ、最終的にPhD進学した話を聞かせるなどして、長期的に見守ることにしています。

 

最後に、3つ目の論文のテーマやトピックを自分で見つけられず、こちらに決めてくれるよう求める学生はビックリするぐらい多いです。これは本当に対応が難しく、成績だけ見れば優秀なのですが、自分でやりたいテーマがないと、たとえPhDに進学したり、研究者の入り口に立っても苦しいだけではないかと心配してしまうのです(´・ω・`) 就職も業績も思い描いたように叶う人など、ほとんどいない業界ですから、少しでも内から湧く興味がないと...

 

PhD進学を志望する学生に対する良い指導法はまだ見つかっていませんが、PhDを取ったらスゲー幸せな世界が待っている的な誤解を解いておくのは、教員の務めのような気がしています。そんな言葉など耳も貸さず、突き進むような学生は、まぁ何とか生き残っていけるのだろうと個人的に思います。