国際派行政学者の挑戦

慶應SFCの教員。才能ないなりに世界レベルの行政学者を目指す40代独身男(負け組)のブログ -月1回ぐらい更新-

ゴッホ展:早すぎる成熟

冬休みを利用し、上野で開催されたゴッホ展に行きました。アメリカ5大美術館(※)を制覇し、ゴッホ晩年の傑作を多く観てきましたが、ヨーロッパの美術館に所蔵されているゴッホ初期・中期の作品を観る機会はなかったので、ゴッホ・フリークの自分としては本当に感涙ものでした(T^T) メトロポリタン美術館、National Gallery of Arts、ボストン美術館、シカゴ美術館、フィラデルフィア美術館、さらにMOMAにもゴッホの傑作があります。

 

ゴッホは、28歳の時に画家を志し、ほぼ独学で絵画を学び、37歳で亡くなるまでの約10年の間に、2,100点以上の作品を残しました。ただ、高い評価を受けている作品は、晩年の約4年間に集中しています。ゴッホの初期・中期の作品が多い今回の展示では、ゴッホが当初は他の画家の模倣をし、典型的な印象派の作品を描きながら、自分のスタイルを模索していた軌跡を辿ることができました...

 

現在自分が研究者として発展途上にあることと重ねながら、ゴッホが初めから異才ではなかったことにやや親近感を持って、しばらく鑑賞を進めていました。ところが、正気を失ったとされる晩年に近づくにつれ、作品の凄み・独創性が増していきます。短い年数で、人知を超えた芸術の域に達するには、悪魔にでも魂を売らないといけないと言わんばかりに。展示には、これを象徴するかのように、ゴッホが弟のテオに宛てた手紙の言葉が、大きく掲げられていました:

 

"そうだ、僕は絵に命を懸けた。そのために半ば正気でなくなっている。それも良いだろう。Ah well, I risk my life for my own work and my reason has half foundered in it - very well - "

 

今回の展示で鑑賞できるゴッホ晩年の傑作が、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている『糸杉』です。自分がPhD時代に20回以上通い、その都度足を長く止めた作品です。まさか、日本でこの作品に再会できるなんて思ってもおらず、運命的なものを感じました。

 

ゴッホのように命を縮める覚悟は全くありませんが( ̄∇ ̄*)ゞ 成長を目指さず論文を書き続けるつもりもありません。80代ぐらいになって、最高傑作が書けるような欲深くウザい老年行政学者を目指そう!と心に誓った新年でした。