国際派行政学者の挑戦

慶應SFCの教員。才能ないなりに世界レベルの行政学者を目指す40代独身男(負け組)のブログ -月1回ぐらい更新-

国際学会:日本人研究者としての不甲斐なさ

f:id:shugo-shinohara:20190614123440j:plain

学会会場:ノースカロライナ大学チャペルヒル校 School of Government

先週から続く大阪・アメリカでの学会2連戦も今日が最後...さすがに時差で頭が痛いです(=。=|||) 8日(土)の日本公共政策学会では、実験手法を使用した研究を発表し、司会の先生に冗談で「黒船」なんて呼んで頂いたりして、国内の行政・政策研究者に最先端の研究手法を垣間見せることができたのでは...といい気になっていました( ̄∇ ̄) ところが、11日(火)~今日までノースカロライナで開催されたPublic Management Research Conference (PMRC)では自分の不甲斐なさを痛感することになりました。

 

PMRCを開催するPublic Management Research Associationは「行政学が他分野に比べて理論・方法論の精緻さに欠ける」という危機感から約30年前に起ち上げられ、発行学術誌Journal of Public Administration Research and Theory(JPART)は短い期間に高いimpact factorを有する行政トップジャーナルとなりました。経済学者や心理学者など他分野の研究者にも論文の投稿を促し、特に方法論の改善に努めてきました。

 

自分が研究発表したパネルは「Innovative Methods in Public Management Research(公共経営研究における革新的手法)」なんて大そうな名前が付けられていましたが(゚ー゚; もちろん自分の研究に対して冠されたものではなく、現役最強行政学オーフス大学Simon Calmar Andersen教授のために作られたパネルでした。

 

Andersen教授のエグいところは、JPARTやPublic Administration Reviewなどの行政トップジャーナルに数々の論文を掲載するだけでなく、American Journal of Political ScienceやJournal of Politicsなどの政治学トップジャーナルにも論文を掲載し、さらに科学系有名ジャーナルPNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)にも第一著者として2本も論文を掲載しちゃっているところですΣ(゚ロ゚ノ)ノ

 

そんなAndersen教授を一目見ようと、パネルには多くの聴衆が集まりました。教授が「行政学はより大規模なフィールド実験を必要とする」と190cm超の身長からは想像つかない謙虚な声で大胆に宣言した後、「実務家向け便利で簡単な実験手法の開発」という目的としては反対方向のものを発表しました(^ ^; 

 

Andersen教授発表直後に帰り支度をする一部聴衆に、「一見隙だらけのこの手法で、若手日本人研究者の自分がJPART単著論文を掲載できました」と冒頭で話すと、会場から笑いが起こり、何人かの方が帰り支度を中断してくれましたwww 発表は何度も練習した甲斐もあって、その後席を離れる人もなく、大きめの拍手をもらうことができました。研究の厳密さだけを追求するのではなく、「実務家向けに制限された予算や時間のなかで使える実験手法を提示することも大切ではないか?」との問いは、聴衆から思ったより共感を得たようでした(^。^;) Andersen教授からも「良い発表だったよ」と言ってもらえたのは本当に嬉しかったです!

f:id:shugo-shinohara:20190614142241j:plain

Andersen教授との写真:苦笑しながらもブログ使用許可を頂きましたw

一方で、この学会ではトップジャーナルに5本ぐらい論文掲載がないと市民権がないような雰囲気さえあり、なかには自分が日本の大学所属と聞くだけで(※)、興味をなくすような態度をする研究者もたくさんいました。これもひとえに自分が国際基準では、一流に程遠い研究者であるせいで、1年で3本トップジャーナルに論文を掲載したラトガース大学の元同僚にも再会し、刺激を受けました。今後日本が行政の国際フィールドで少しは存在感を持てるよう、まず自分がもっと頑張らないといけないと強く思った学会でした。

※大学の英語名にJapanが入るのは本学International University of Japanだけのような気もします...そういう意味で結構気に入っています。ちなみに、日本大学の英語名はNihon UniversityでJapanの文字は入りません。